2022/01/30
副交感神経を回復させよう
五官の触れ合いを大切に体のリズムは養生しだい
風薫る五月、さわやかな日々をお過ごしでしょうか。それとも家の中に閉じもこり、夕べも眠れなかったと憂うつな顔をしておられるでしょうか。
後の方は、少々神経がお疲れのようですね。神経といいましても、ここでいうのは自律神経のことです。自律神経の狂いを自律神経失調症と呼んでいますが、今回は、ストレス性の病気とかかわりの深い自律神経について書いてみようと思います。
まず体には二つの神経系があります。一つは脳脊髄神経系、もう一つは自律神経系です。自律神経には交感神経と副交感神経があり、この二つは私たちの意志とは関係なく、自動的に体のリズムをとってくれています。例えば涙、汗、唾液の分泌、呼吸乱れ、血液のめぐり、心臓の働き、食道、胃、腸、胆嚢の動きなどはすべて、自律神経の働きで自動的に調節されているわけです。
一日の生活のリズムを考えてみますと、一生懸命仕事に打ち込んでいるとき (緊張状態) は交感神経が働き、ゆったりとくつろいだ気分でいるとき (弛緩状態) は副交感神経が働いています。頑張っているときは瞳孔が開き、血圧が上がり、心臓が高なり、筋肉も硬直しますね。そうしたときは副交感神経が働く胃腸はお休み状態、胃液の分泌はありません。ですから、仕事で頭がいっぱいのときに食事をしても消化吸収がよくないのです。
ところが現代社会は、大人の世界も子供の世界も競争の時代。社会が求める人間も、競争に勝ち抜ける強い意志と体力の持ち主ということになり、四六時中気を張り巡らし、眠っていても考えごとをしたり、失敗すまいと頑張ったり・・・。これでは交感神経が働き過ぎてしまいます。イライラ、不安、不眠、偏頭痛、高血圧、心臓神経、関節炎などを引き起こす要因です。
本来人間には、安らぎ、保護されたいという依存性があります。現代社会ではこうした面は弱者とみなされるためか、表面に出したがりません。そのうえ、やすらぎの場が家庭の中からも消えてしまっています。お父さんも子供たちも、お母さんに触れているときが一番緊張がとれ、筋肉も緩められています。お母さんの手作りの食事だと食欲がまし、お母さんのそばで寝るとぐっすり眠れる。こうした五官の触れ合いが副交感神経を働かせるのですが、それが足りないと副交感神経が働かず夜尿症、便秘、喘息、胃潰瘍、大腸炎などの症状を引き起こします。
要するに自律神経系の交感・副交感の神経が緊張と弛緩のバランスをとって体のリズムを整えてくれているのですから、このバランスがくずれると、いろいろな症状が出る自律神経失調症が起こるということです。
現代は文明の利器の発達のおかげで、手間暇をかけないという考え方が強く、生活全般にも手抜きの傾向がありますね。ちょっとイライラしたり眠れないから、ドキドキするからといっては精神安定剤や睡眠薬を欲しがり、効果が出ないとすぐ、もっと効く薬を求めたがるのも、安易な傾向といえましょう。
その反面では、自分で養生することを忘れ、私どもが養生法をアドバイスしても、自分の体にさえ手間をかけなくなっている状態です。
しかし競争が激しく忙しい現代生活では、時間をかけて養生することも難しいのかもしれません。昼頑張る交感神経、夜働く副交感神経の機能を知り、まず副交感神経の回復をはかりましょう。そうすれば体のリズムが整い、身心ともに充実した生活がおくれます。
精神安定剤や睡眠薬は副作用としていろいろな精神障害をひき起こすと発表されています。薬剤師の立場からひと言申し上げますと、このような薬を服用なさる方は十分注意して下さい。